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ーー
「う、嘘でしょ」
「嘘じゃないよ」
「じ、冗談でしょ」
「だから違うって」
「じゃあ、起きたまま夢でも見て…」
「あんましつこいとパイルドライバーかますよ?」
ニッコリと優しく微笑んだ優希ねぇは、今まで見たどんなホラー映画よりホラーだった。あ、俺怖いの苦手だから見たことないや。
因みに、パイルドライバーとは逆さにして頭を地面に突き刺すようなカッコの恐ろしいプロレス技…ていうかウチのねぇ達は何でプロレス技に詳しいんだ。勘弁して欲しい。
…いやいや、そんなことは今どうだって良くて。
「じ、じゃあホントに結婚するの?」
「嘘で言わないでしょ」
日曜の昼過ぎ、さっきまで寝てると思ってた優希ねぇがリビングに顔を出したと思ったら物凄いことを言い出した。
「で、で優希ねぇ今彼氏居たっけ?」
今年から社会人の優希ねぇは、毎日毎日遅くまで働いてる。休日出勤だって少なくないみたいだし、印刷会社の事務なのに取引先に出向くこともあるらしい。全ては人数が少ないせいって、前に言ってたけど。
早乙女家の女性陣は揃って顔が良いから、モテない訳じゃないのは分かってた。特に千里ねぇなんかコロコロ彼氏変わるし…
けど優希ねぇは、なんて言うか俺から見て「今はそんな余裕ない」って感じだったからまさか彼氏が居てしかも結婚なんて有り得ないと思ってた。ていうか、頭に浮かべたこともなかった。
「優希ねぇ、彼氏居たんだね」
「彼氏じゃないけど?」
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