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当然のようにそう口にする、いつもと違う雰囲気の優希ねぇ。スカートよりパンツ、フワフワよりカッチリって格好が好きな優希ねぇにしては珍しく、フンワリしたニット素材の淡い色合いのワンピース姿。
このカッコで平然とパイルドライバーとか言っちゃうんだから、恐ろしいのなんのって…ってそうじゃなくて。
「え!?彼氏じゃないの!?」
じゃあ、彼女!?え、でも同性同士は結婚できないよね?
「会社の、上司」
「上司!?」
「話したことなかったっけ?」
優希ねぇの一言に、俺は頭を巡らせた。優希ねぇの口から聞いたことある上司って、一人しか居ない。酔っ払ったら、いつも俺をその人に見立ててプロレス技とかかけてくるから。…え、もしかして、上司って。
「優希ねぇがいつも愚痴ってる、あの…!?」
あの野郎、とかあのハゲ、とか憎々しげに言ってるあの人!?
「そんな愚痴ってはないでしょ」
普通の顔して言うけど、愚痴ってるから!寧ろ口以上に手が出ちゃってるから!俺に!
「え、ホントにその人なの…?」
「南が言ってんのがどの人か分かんないけど、ウチであの人以外の上司の話したことないから多分合ってる」
え、え、えぇぇぇーっ!?
「で、でも、嫌いなんじゃないの!?」
ハゲてるんじゃないの!?
「まぁ、最初は嫌いだったけど」
「じ、じゃあ何で結婚!?」
ていうかハゲてるんでしょ!?
「あの厳しさが、愛故だって気付いたから…かな」
ちょっとポッとする優希ねぇに、俺は目を剥いた。
あんなに愚痴ってたのに!文句ばっか言ってたのに!し、し、しかも!
「ハゲてるんでしょ!?」
「は?ハゲてないけど。あんたバカにしてんの?」
優希ねぇが、自分で言ってたんじゃないか!!!
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