230人が本棚に入れています
本棚に追加
/421ページ
マズイ、買う瞬間がバレるとは予想してなかった。しどろもどろの俺に、相川さんの眉間の皺がどんどん増えていく。
「じゃあ…誰に買うつもりだったのよ」
「え、いや…誰って…」
え、それ言うの?え、本人に?
「…私には言えない人って訳?」
不機嫌通り越して、悲しそうな顔になっていく相川さんに、俺はどうしたら良いのか分からなくなった。
「まぁ…ある意味言えない相手と言いますか…」
「……」
「ハッキリ言ってしまいますと、相川小花さん。に、似合うかな…と…」
「……」
な、何てカッコ悪いんだ。コッソリ買おうとしたのがバレて、しかもキョドりながら本人に言っちゃうなんて。けど上手く誤魔化せる自信ないし、また嘘吐くのもどうかと思うし、何よりこんな顔させちゃってるのにサプライズ続行させる意味なんか、何にもない。
「ごめん。ホントは相川さんに内緒でこっそり買ってプレゼントしたかったんだけど…カッコ悪いね…ごめん…」
ネックレスを元の位置に戻しながら、謝る。相川さんは、驚いた顔でどこを見てるのか分からない。と思ったら、
「…外に、出ています」
そう一言口にして、俺の方を見ることなくフラフラと店の外へ出て行ってしまった。
…あれ、何だろうこの状況。相川さん、行ってしまった。取り敢えず、不機嫌なのは直ってた…?何か目が虚だったけど、大丈夫かな。
店を出ていく相川さんが何か変だったので、気になった俺は彼女を追いかけるように足早に店を後にした。
……
バッ
「すいません、これくださいっ」
ーー
「あ、相川さんっ」
さっきの場所に戻った俺は、息を切らしながら彼女に声をかけた。
「……」
無言で俺を見つめる相川さんの、その何とも言えない顔。
最初のコメントを投稿しよう!