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……
「あ、あのー」
ネックレスを見つめたまま、無言の相川さん。
「相川さん?相川小花さん?」
寝てんじゃないかって思う位、動かない。名前を呼びながら俯きがちのその顔を覗き込んだ瞬間、
「な、あ、あ、ああい!?」
相川さんが、泣き出した。
ポロポロ、っていうかもうボロボロって感じで次から次へと涙が溢れてる。表情そのままなのに、大きな瞳からは涙が止まらない。
「ち、ちょっと!ちょっと待って!」
慌てて反対のポケットからハンカチを取り出す。私服なのにハンカチ?えぇ、持ってますとも勿論。
遠慮がちに彼女の目元にハンカチを当てると、少しだけビクッとしたけど相川さんは抵抗しなかった。
「ご、ごめん」
咄嗟に、謝ってしまった。
「何の、ごめん?」
「相川さんの泣いてる理由が分からなくてごめん、のごめん」
彼女が泣いてるのに、情けない。けど、検討もつかない。
相川さんは小さく鼻をすすって短く深呼吸すると、赤くなった目元でしっかり俺を見て、
「ありがとう、南」
優しい声色でそう言った。
「理由、自分でも分かんない。ていうか、追いかけてって文句言って、挙句こんな態度なんて自分が情けなさ過ぎて。可愛くない自分が嫌で、泣けてきた。のと、後嬉し過ぎてってのもあるし…何か分かんない」
さっきの悲しそうなバツの悪そうな表情じゃなくて、何となくスッキリしてるような相川さん。
「ごめん、私こんなんで。空気読めないし、可愛げないし、自分で自分が嫌になる」
また表情が曇り出す。
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