最終章「南、大団円なるか?」中編

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「慎二さん、どうぞ、どうぞ!優希をよろしくお願いします!くれぐれも、くれぐれも!」 「あーあ、お父さんやっぱり泣いてる」 「泣くにしてもタイミングおかしくない?」 「ちょっとお父さん、汚いからホラ。涙と鼻水拭きなさい」 テーブルの上いっぱいに並べられた料理。九人もテーブルに座れないので、高校生組は座卓。ワイワイ、ガヤガヤ、モグモグしてたら急に父さんが号泣し始めた。 しんみりした雰囲気でもなんでもないのに急に泣き出したから、早乙女家の女性陣から総ツッコミ食らってる。けどそれにめげることなく、嗚咽を漏らしながら慎二さんの手をブンブンしてる父さん。 慎二さんは、ビシッと伸びた背筋と読めないポーカーフェイスのまま一回頷いて。 「僕は、見ての通り面白みも何もない堅物です。言葉足らずで、これから優希さんにもきっと嫌な思いをさせてしまうかもしれません。それでも僕は、優希さんを力の限り守り抜いていきたいと思っています。明るくて、眩しくて、強くて、芯があって。年上の僕がこんな風に言うのもおかしいかもしれませんが、優希さんはきっと生涯、僕の憧れの人です」 長いセリフを一回も噛むことなく言い終えた。そして立ち上がり、両親を真っ直ぐ見て正にお手本の様な一礼。 「どうぞ、よろしくお願いいたします」 顔を上げて、もう一度そんな台詞を口にした。 「慎二君…」 父さんの目から、またポロポロ涙が溢れてる。顔がめっちゃ歪んで、もうヒックヒック言っちゃってるし。 「堅っ、慎二さん真面目〜」 千里ねぇが笑いながら茶化した。 「慎二さん、ありがとう。この間もきちんとお言葉頂いたんだから、今日は気にしないでたくさん食べてね?お父さんも、その内泣き止むから」 母さんが柔らかく笑いながら、慎二さんの空のグラスにビールを注いだ。 「ありがとうございます」
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