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そのハンカチを素直に受け取る俺。
「あ、相川さん。あ、ありがと…うゔっ」
「ちょっとやだ、南マジ泣きしてんじゃん!」
千里ねぇが手を叩きながら笑うけど、絶対そんな面白いことは怒ってない。
「まぁ、南は結局姉離れできないシスコンってことでしょ」
こっちを見もしない、冷静な口調の渥美ねぇ。
「小花ちゃんも苦労するわね、義理の姉が三人も居るなんて。あ、私はいつでも小花ちゃんの味方だからね?」
ふふふっと笑いながら、とんでもないことを口にする母さん。
「そうだよな、そうだよなぁ南。姉さん、お嫁に行っちゃうの嫌だよなぁ。分かるぞ、分かるぞぉその気持ち。…ゔっ」
俺の肩をポンポン叩きながら、自分もまた号泣し始める父さん。
…違う。皆違う。ズレてる。俺はシスコンでも何でもないし、悲しんでる訳じゃない。確かに色々感極まってついほんのちょこっとだけ泣いちゃったけど、優希ねぇにお嫁に行ってほしくなくて泣いた訳じゃない。
慎二さんはしっかりした良い人っぽいし、優希ねぇも幸せそうだし、これから二人が末長く幸せでいられたら良いって心から思ってる。
例えこれから夜酔っ払った優希ねぇにプロレス技かけられる、なんてことがなくなったとしても、それはむしろ喜ばしいことであって。断じて、断じて寂しくなんかない。
………うゔっ。
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