229人が本棚に入れています
本棚に追加
/421ページ
「おーい、鼻の下伸ばしてんなよ南ぃ。舐め回すように相川さん見ちゃって、ムッツリだなお前は」
後ろからガッとのしかかるように肩を組んで着たのは、理人。ワックスで片方に流すようにセットされたヘアスタイルとスーツ姿で、いつもの何倍もカッコ良く見える。
「舐め回すようになんか見てねぇし!」
本人の居る前で止めろ!
「ヤダ慌ててる〜気持ち悪〜。小花ちゃん、私達から離れちゃダメだよ」
そう言って、千里ねぇは相川さんを自分の方に引き寄せた。
「ち、ちょっと千里ねぇっ」
理人に乗っからないでよ!
「まぁ、アンタも案外サマになってるんじゃん?理人には遠く及ばないけど」
渥美ねぇが俺の頭のてっぺんから足先まで目線を沿わせながら、割とどうでも良さそうなトーンでそう口にする。
式場からレンタルしたスーツは、凄くオシャレだった。黒よりのグレーに、両袖の辺りに白いラインがポイントとして入ってる。
細身に見える作りで、ツーピースっていうの?ベストも付いてるタイプ。ネクタイも細身で、スーツ用のフォーマルシューズも借りた。
ワックスでクシュッとさせた前下がりのマッシュヘアは、キチンと見えるように前髪を横に流すようにセットしてる。
「こうして見ると、南もちゃんと男の子なのねぇ」
ちょっと、俺を産んだ母さんが言わないでよ。
「南、背ぇ伸びたなぁ」
と、父さん。いつから居たの。ていうか顔全体が真っ赤だけど大丈夫かな。
そうこうしてる内に式場のスタッフから声がかかって、俺達はチャペルに案内される。いよいよ、結婚式の始まりだ。
最初のコメントを投稿しよう!