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「てか、私普通に早乙女君に勝っちゃいそうだし」
…そこまでひ弱に見えますかね、俺という男は。
「まぁ、だから変な心配は無用」
「…へい、分かりやした」
熱く息巻いていた俺は何処へやら、急激にショボくれた。
「本当、早乙女君って変人」
「あ、また言った!」
「だって意味分かんないんだもん」
そう言いながら、相川さんは笑っていた。
「しかも別に、早乙女君の為じゃないし。そもそも、ウチの兄ちゃんが男らしいってとこに疑問感じるし」
「いや、それは大丈夫。あの人は完全に俺の理想像」
軽く片手を上げる俺。帝様が間違っている筈はない。
「まぁ、早乙女君が良いんなら良いけど」
「うん!ほんっとうにありがとう、相川さん!!」
「早乙女君の為じゃない。私が、変わる為」
呟くようにそう言う相川さんは、何処か寂しげだった。美少女で、特Aで、言いたいこと何でも言えちゃう彼女にも、やっぱり悩みはあるらしい。
変わりたいと願う相川さんは、きっと今の超毒舌キャラである自分が好きじゃないんだ。俺だって、「可愛い南ちゃん」は好きじゃない。
「俺、何でも協力するから!」
「はいはい」
「相川さんが俺に頼んで良かったって思えるように、めっちゃ頑張るよ!」
「…自分のこと考えなさいよ」
「それも頑張る!」
「…バカ」
また呆れ顔で溜息。ゆっくりと歩き出した相川さんに、俺もニヤケ顔でそれに続いた。
ーーこうして俺達は、側から見れば非常に異質な「秘密の協力協定」を結んだのだった。
変わりたい俺と、同じく変わりたい相川さん。二人揃えばきっと、理想通りの明るい未来が築ける筈だ。
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