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「私、友達居ないけどイジメられてるわけじゃないから」
「え…」
「だから、変に気ぃ遣うとかナシね」
「あ…」
バレてた。
「遠いファミレスとか、面倒くさい。足も、自分でコケただけだから」
相川さんはそう言いながら、もうほとんど完治しているらしい左足首を少し上げて動かして見せた。
別に、めちゃくちゃそう思ってた訳でもないけど。変に誤解されて相川さんが嫌な思いしないかなー、とは思ってた。秘密の協力関係ってのも勿論理由の一つではあるけど。
「別に気とか遣ったつもりないけど、相川さんがそれで良いなら普通にするよ」
「大体、早乙女君と居たって女友達位にしか思われない」
「…相川さんが友達できたと思われるなら、もう何でも良いわ」
いや、良くはないか。それを脱却しようと頑張る訳だし。
「お人好し」
そう言いながら、相川さんは何処か楽しそうだった。
「今日はあんま出来なかったけど、次はちゃんと俺の可愛い脱却作戦の話聞いてよね!」
「はいはい、次ね」
もうこっちを見ていない。改札に向かいながら、軽く片手を上げただけ。颯爽と去って行く後ろ姿は、本当男前。
違った、相川さんは可愛くなりたいんだった。可愛く、というか毒ばかり吐いてしまう自分を変えたいって感じ。言いたくて言ってる訳じゃないってことは分かる。けど、言葉って時には物凄い武器になることも分かる。
「相川さん、上手く行くと良いなぁ…」
その為に、俺も頑張らないと!「可愛い南」が「カッコいい南」になったら、きっと相川さんのモチベーションアップにも繋がる筈。「アイツにもできたんだから私にもできるわ」みたいな。
よし、早く帰ってもっかい「ドSな彼氏に夢中過ぎて困ってます」読もう。もう何回読んだか覚えてないけどね。
こうして俺は能天気に帰路に着いた訳だけど、この時のバカ過ぎる自分を死ぬ程後悔することになるってことには、当然気付けなかった。
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