9.嘘偽りのない僕はきみと恋をする

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 しばらく肩を震わせて、何も話せないような状態になってしまった花穂ちゃんの隣で、僕は事故現場になった場所を見つめる。  もう、事故を思わせるものは全て撤去されていて、全く跡形はないものの、やっぱりそこを直視するのは苦しかった。  大切な人を守りたい一心で自分が犠牲になるだなんて、そんなこと本当に自分の命の危機が迫ったときに、僕にできるのだろうか。  兄ちゃんは、本当にすごい。  本当に、自慢の兄ちゃんだったよ……。  涙で差し込む夕陽がお星さまのようにキラキラして見える。  僕は改めてこの事故現場で両手を合わせた。 「……ごめんね。ちょっと落ち着いた」  落ち着いたとは言葉で言ってるけど、花穂ちゃんの目は真っ赤だし、鼻はズビズビいっている。  さっきまで眩しいくらいだった夕焼けは、徐々に群青色の空へと変化している。 「ううん。じゃあ、そろそろ行く?」 「うん」  最後にもう一度手を合わせて、僕たちは再び歩きだす。
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