9.嘘偽りのない僕はきみと恋をする

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 特に会話が交わされることなく、花穂ちゃんの家の通りまで来てしまった。  といっても、さっきの祭り会場になった公園までも徒歩十分くらいだ。  彼女の家の前まで送り届けて帰ろうと思っていたのだが、不意に花穂ちゃんは足を止めた。 「……どうしたの?」  もう花穂ちゃんの目に涙はなく、さっきまで聞こえていた鼻をすする音も落ち着いたようだ。 「……ショウちゃん。やっぱり気にしてる?」  ドクンと胸が音を立てた。  気にしてる、っていうのはやっぱり──。 「私の記憶が戻るまでの間、リョウちゃんとして私に接してくれていたこと」 「……えっと」  そりゃ、気にするだろ。  いくら花穂ちゃんの記憶が戻ればと思ってしたこととはいえ、僕は花穂ちゃんの記憶が戻るまで嘘をつき続けていたのだから。 「……一応、この前も言ったんだけどな。気にしなくていいって」 「ごめん……」  確かに言われたけど……。  花穂ちゃんは優しいから、僕のことを思ってそう言ってくれただけかもしれないし。  目の前の花穂ちゃんの目を見ることが出来ず、思わず視線を下に落としたとき、ぽつりとつぶやくように花穂ちゃんが告げた。 「……私は、寂しいよ」  その声に弾かれるようにして再び花穂ちゃんに視線を戻す。
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