プロローグ

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 20XX年。七月。  夜空に響く祭り囃子の音。  立ち込める熱気にも負けずにはしゃぐ人々。  喝采に包まれた祭り会場は、まさに夏の風物詩をそのまま再現していると言えるだろう。  そんな中、何の突拍子もなく、会場には明らかに不似合いなドンという音と何かをなぎ倒すような音が響いた。  それと同時に、人々の悲鳴が次々に飛び交う。  祭り会場だった広場に、車が突っ込んだのだ。  一台の車が、広場のフェンスを破り、数メートルの高さから落下した。車はそこでやっていた綿菓子を売っていた屋体を潰した。  綿菓子を作っていた夫婦は、運良く接触を免れる位置にいた。しかし、綿菓子を買うために並んでいた客を巻き込む形になっていたようだ。  車は落下のショックで炎上するという事態には陥らなかった。それでも車体はほとんど形を留めていなかった。  パニックになる会場内で、誰かが通報してくれていたのだろう。  鳴り響いていた祭り囃子も消えてから十分もしないうちに、一帯には何台もの救急車やパトカーのサイレンの音が響き渡った。  事故の原因は、酒気帯び運転によるハンドル操作ミスだろうと言われている。  この事故により、運転していた男性を含めて二人が死亡、意識不明も含めて八人が重軽傷を負った。
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