9.嘘偽りのない僕はきみと恋をする

12/15
前へ
/204ページ
次へ
「ショウちゃんは、ショウちゃんのままで居てくれたらいいから。もう無理にリョウちゃんにならなくていいよ。それにそんなこと気にしなくても、ショウちゃんは充分男らしいよ」 「そ、そうかな……」  さっきまで再び劣等感に押し潰されそうになっていたのに、花穂の一言ですぐに頬が緩んでしまう。  花穂の言葉一つ一つに踊らされているみたいで悔しいけど、実際のところ、僕は昔から花穂のことが好きなのだから仕方ないのかもしれない。 「そうだよ、この夏休み中いつも思ってた。でもこんなこと言っておきながら私、ショウちゃんが今までみたいにそばにいてくれたら嬉しいけど、前みたいにお姉さんらしくできずに、甘えちゃうかも」 「そんなの気にしなくていいよ。いくらでも甘えてくれていいから」  本当のことを知ったら、花穂は僕のことを遠ざけると思っていた。けれど、どうやらそうではないらしい。  それなら僕は、そばで花穂を支えたい。  背伸びせず、ありのままの僕が、これからの花穂を支えるんだ。 「花穂が、ほんのわずかでも僕のことを必要としてくれているのなら、僕こそこれからも花穂のそばにいてもいいかな……?」 「もちろん。ありがとう」  辛い現実を受け留め、受け入れて、乗り越えて前を向くことは、とても難しい。  一人ならなおさら。  それなら、二人で一歩ずつ前に向かって歩いていきたい。
/204ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加