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いつもは俺と碇と安西と石川で、教室に残っておしゃべりした後、碇と一緒に帰るのだが、その日は用事があると嘘をついて一人で学校をでた。その間、ドギマギしていた俺はみんなに不審に思われたに違いない。でも、今日だけは一人になってもう一度手紙の内容をちゃんと確認したかったのだ。
いつもより早歩きで家に帰ると、自分の部屋に駆け込み、カバンからノートを取り出す。
親もまだ帰って来ていないのに、誰も見るはずもないのに、あたりを見回してからノートを開いた。
「好きです。付き合ってください 石川」
変わらずその付箋が張り付いている。
そして、今気づいたのだが、付箋に描かれたイラストの猿がバナナ一房を片手に「お返事くだサル?」と言っていた。
告白に返事をするのは当たり前だ。
しかし、もう家に帰ってきてしまった。
この場合、いつ、どこで、どうやって返事をしたら良いのだろう。
石川と出会ったのは中学に入学してからだ。
仲が良くなったきっかけは席が近かったという理由に加えて、碇と安西のおかげだ。
あいうえお順にならんだ席は、左隅の列は男子の列で、前から相田隆(俺)、碇祐介、その隣は女子の列で前から安西優子、石川由美と並ぶ。碇と安西が同じ小学校出身で仲良しだったおかげで、俺と石川も巻き込まれる形で仲良くなった。
給食も机を四人でくっつけて食べ、昨日テレビで見たお笑い番組やドラマの話などをして毎日わいわい過ごした。
石川を意識し始めたのは六月のディズニーランドの遠足からだ。
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