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俺は決して石川のこと嫌いじゃない。そして、石川も俺のことを悪くは思っていないだろう。でも今、俺が石川に告白するのは違う気がした。
「そのうちな」
俺は碇に耳打ちした。
そのうち、石川のことを好きになったら、その時には告白するよ。そういう意味で言った。
「おう」
碇はこの「そのうち」というあいまいな返事に納得してくれたみたいで、これ以上は何も言わなかった。
俺は告白する気はなかったし、石川の事を仲の良い友達としか思っていなかったけれど、その日から目を閉じるとなぜか石川の笑顔が眼に浮かぶようになってしまって、学校でも自然と目で追うようになってしまった。
一度目のチャンス
ラブレターをもらった翌日の放課後、石川は安西と普段通りにおしゃべりをしている。あのラブレターなんてなかったようにも思えるくらい普通に過ごしていた。
いつも俺たち四人は授業が終わったら少しだけ教室に残って、おしゃべりをして帰るのだけれど、ラブレターをもらって気が動転している俺は四人でおしゃべりをする気分ではなかった。
カバンに教科書を入れて帰る準備をしていると、学校の図書室で借りていた『マンガ日本の歴史』の返却期限が今日だったことを思い出した。
「今日で借りていた本かえさなきゃいけないから、ちょっと図書館に本をかえしてから帰る」
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