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2nd Quest:セロシア山の不死鳥石
今回のクエストの目的である不死鳥石は、ここから五十キロ程北東へ向かった火山帯のセロシア山頂上にある。この火山帯は昔から頻繁に噴火を繰り返していて、どっかの島のようにうじゃうじゃモンスターはいない。寧ろ生物は殆どいないので、難敵がいるとすればそれは『自然』の方だ。
不思議なことにあの辺の山は、下が豪雪地帯になっている。だがそれも、装備さえしっかりしていれば大した事じゃない。防寒具とうちの優秀な魔女のおかげで、暖をとりながら豪雪地帯を抜け、俺達は難なくセロシア山の頂上へと辿り着いた。
問題があるとすれば、それは不死鳥石の方だ。不死鳥石はマグマのように真っ赤に輝き続け、マグマのように熱い鉱石だ。誰も素手で触ることは出来ないが、このクエストを持ってきたフラウ国の鉱物学者であるクレイが、国の最先端技術である『氷の糸』で編まれた袋を用意していた。そいつに石を入れることさえ出来れば、無事不死鳥石を持って帰れるっていう寸法よ。
あとはその不死鳥石がどこにあるか、だが……
「どこにあるかわからなかったのか?」
「うんにゃ。不死鳥石が埋まってる所ってのはわかり易い。そこには必ずシューシューと蒸気が立ち昇ってるからな。まるで湯が沸いた時のやかんだ」
頂上には蒸気が湧き出しているところが沢山あった。それだけの量の不死鳥石が埋まってるってことだ。こっからの力仕事&危険な採掘は、盗賊である俺の出番とばかりに、持ってきたつるはしを……
「ちょっと待て。採掘作業は別に盗賊じゃなくても出来るだろう?」
「まぁそうだけど、クレイは学者だから非力だし、マリーは女で力仕事は向かないから、こういうのが俺の出番なの!」
「つまり今回そこしかお前さんの出番が無かったわけだな?」
「黙っとけよ!!」
しかし俺達はここで気づくべきだったんだ。何故こんなに沢山の不死鳥石が存在するのに、誰もこのクエストを達成しなかったのかを。
これは後からクレイが推察した話だが、不死鳥石というのはやはりセロシア山のマグマの一部だったんだ。そのマグマの一部である不死鳥石を採掘するっていう行為は、例えるなら固まりかけた傷口のかさぶたを一部引っぺがすのと同じだ。
「それってまさか……」
「そう、俺達はとんでもないことをしたんだ」
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