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マスターがモンスターの頭を優しく撫でると、ダイアンの時とは打って変わって気持ち良さそうな顔でされるがままになっている。
「あぁそうかよ……慰めてやろうと思ってここに連れて来たのにね! 俺は!!」
「慰める? そう言やコイツにも酒を注文してたな。酒なんて飲ませて大丈夫なのか?」
「あぁ、俺よりもざるだから大丈夫だろ。グラスでは無理だろうから、皿で用意してやってくれ」
「用意するのは構わんが……それよりお前さん、そろそろ溜まったツケを払って貰わにゃ…」
そう言いかけたところで、カウンターの上に重そうな革袋がドカンと置かれる。
「何だ? こりゃ……」
「2500万ゴールド」
「何ぃ!?」
革袋を開くと確かに金貨がザクザクと入っている。
「こりゃ一体どうしたよ?」
「聞きたいか? 俺の武勇伝♪」
そう言うダイアンのドヤ顔がうるさいので、マスターはとりあえず「まともな金なのか?」と訊き返す。
「失礼だな! 二週間前にここで話してたクエストの報酬だよ!!」
「成功したのか! いや待て。あの時クエストを持って来た学者さんの話じゃ、報酬は1億ゴールドって言ってなかったか? 三人で山分けしてもまだ足りねぇじゃねぇか」
無精髭を撫でながら「痛いとこつくよねぇ~」と、ダイアンの顔はゲンナリする。
「国に値切られたんだよ。目的の鉱石が想定よりも小さいってんで、報酬額半分」
「国もしけてんなぁ……」
「本当だぜ。こちとら命からがら持って帰ったって言うのによ!」
「あれ? 半額ってことは5千万ゴールドか。じゃあ、あの魔女の姉ちゃんと山分けしたんだな。彼女はどこ行った?」
素朴な疑問を口にした途端、ダイアンの顔がこれでもかというくらいしょっぱい顔になる。
「それ聞いちゃう?」
「いや、別に話したく無ければ無理にとは言わんが……」
「じゃあ俺も今日は徹底的に酔いたいから、コイツと同じ酒用意して!」
何故かヤケになったダイアンが、隣でペロペロとどぎつい酒を舐めているモンスターを指差して言い放つ。「介抱するの俺じゃねぇか……」と零しながらも、マスターは彼の愚痴になるだろう冒険譚を聞く為、酒を用意するのだった。
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