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一番大きな蒸気を上げている穴に向かって、俺は勢い良くつるはしを殴りつけた。すると穴はどんどん広がっていき、それまで出ていたものとは比べ物にならない程の蒸気が噴出した。それはどんどん大きくなり、蒸気は熱水に変化して、ついには地響きがゴゴゴゴ……と鳴り始めた。
『おいおい……さすがにこれはヤバいんじゃないのか?』
『そうですね、一旦下山しましょう!』
クレイの号令で俺達は一目散に下山を始めたが、地鳴りはついに本物のマグマを呼び寄せた。セロシア山は大噴火し、勢いに乗ったマグマが全速力で逃げる俺達に向かって押し寄せる。
人間の足がマグマのスピードに勝てるわけもなく、俺達三人共マグマに飲み込まれる……と、少なくとも俺とクレイは思った。しかし、その後ろを走っていた魔女のマリーだけは違った。
彼女は飛行魔法を唱えて宙に浮くと、俺達に追いつきそうなマグマに向かって凍化魔法を何度となく唱えた。マグマが冷えて固まるのは一部…それも一瞬だけだが、その間に俺達はマグマとの距離を稼ぐ。固まったマグマの上を後続のマグマが追い越すとマリーがまた魔法を唱える……その繰り返しで、彼女が殿を務めてくれたおかげで、俺達はやっとの思いで山裾の豪雪地帯まで逃げ込むことが出来た。
「本当に優秀なんだな、あの美人の姉ちゃんは。あれ? ちょっと待て。あの石はどうなった? 今までの話だと……不死鳥石ってのはまだ手に入って無いよな?」
「それな。でもこの後、奇跡が起きたんだ」
「奇跡?」
豪雪地帯に辿り着くと、そこまで追って来たマグマの勢いはまるで赤ん坊のよちよち歩きに弱まった。それでも度々後ろを気にしながら、積雪の中を下山していると……
『二人共、あれを見ろ!』
マリーが急に叫んで指差した方向を見ると、セロシア山の噴煙や噴石に混じって、一際光る物体がキラキラと弧を描いて飛んでいた。
『あれは不死鳥石か!?』
『かもしれませんね……でもあのまま飛んでいくと、大分遠い所に着地するかもしれません』
それを聞いたマリーは突然、クレイから不死鳥石用の袋を奪い取り、代わりに三つの小さな魔石を俺達に渡した。
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