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アザミは男の指ごと、クリームを舐めて……。
甘酸っぱいイチゴを味わった。
「……美味しい」
「良かったです。楼主に勧めていただいた店で購入したのですが」
「……楼主は、おまえがケーキを買いに出たことを、知っていたのか……」
アザミは眉間にしわを寄せて、男を睨みつけた。
アザミには黙って出掛けたくせに、楼主には言っていたことが面白くなかったのだ。
怪士が困ったように笑って、首肯する。
「外出の許可をいただいた際に……ずいぶんと人気のある店で、予約なしで買うなら、朝いちで並ばなければすぐに売り切れると聞いたので」
怪士の返事に、アザミは小さく鼻を鳴らした。
意地の悪い男だ。
あの男の人脈を以ってすれば予約など簡単に取れたに違いない。
きっと、わざと怪士を並ばせたのだろう。
アザミは楼主への文句を口にする代わりに、もう一度イチゴをねだった。
餌付けでもするように、怪士がまたイチゴを摘まみ、アザミの口に入れてくれる。
アザミは男の手を掴み、イチゴを咀嚼する合間に太い指をしゃぶった。
ぬちゅ、ぬちゅ、と舌を這わせ、濡れた音を立てていると、怪士の目に欲望の色が灯る。
「アザミさま……」
熱っぽく名を呼ばれ、アザミはふふっと笑った。
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