お前がほしい

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「ストローの代わりに慎介のこれでいいよ?」 明らかに酔っている私は、大胆にも慎介の唇に自分の人差し指を添える。 「お前、酔いすぎ。 なんで酒くせぇ同士で水の口移ししねぇといけないんだよ」 呆れた表情をしながら、私の手首を掴む慎介。 うーん、イマイチな反応だな。 面白くない。 「でも水飲めない」 「じゃあ飲むな」 「ケチ。さっきまで優しいと思ってたのに」 「お前がわけわかんねぇこと言うからだろ?」 なんか慎介が平然としてるのが腹立つ。 どうしても違う表情が見たかった。 例えば、さっきみたいな驚いた表情とか。 あれも貴重な表情だ。 だから今度は慎介の首元に腕をまわす。 グッと近く距離。 また慎介の目が見開かれた。 そう、この表情を私は見たかったんだ。
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