雪降る夜に

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 台所から続く居間にはテーブルが置かれ、湯気の立つ食べ物が所狭しと並んでいた。 「まあまあ、金子さん。こんな日に悪いねえ。明日でもよかったのに。明日は午後から雪は小降りになるというから」  おばさんはエプロンで手を拭きながらそう言う。 「いえ、おばさん。やはり今日でなければ。だって孝之の命日でしょう?」 「ああ、覚えていてくださったかね」そう言って目を潤ませ、和室の仏壇を見た。 「では、お線香をあげさせていただきます」  賢人はジャンパーを脱いで、仏壇に向かった。ジャンパーはすかさずおばさんが拾いハンガーにかけられ、鴨居に下げられた。  仏壇には年老いた男性の写真と若い男性の写真が2つならんでいた。 「孝之……」  年老いた方は父親で、13年前に他界したこの家の主だった。そして若い方は賢人のかつての親友だった。  孝之が死んだことに3年たってやっと慣れてきた。保育園時代から、高校まで、ずっと一緒だった親友。部活も一緒のサッカー部だった。あんなにも身近でまるで双生児のように育ち、いいところも悪いところもすべて知りつくしていた親友。その親友は突然にこの世を去ってしまったのだ。 「なあ、孝之。おれはまだ、ずっとずっと寂しいよ」賢人は心のなかで呟く。
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