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こうべをたれ瞑目している賢人の背中を小雪がちょいちょいと指でつつく。
「カネゴン、寝ているの?」
「小雪ちゃん、寝ていないよ。天国のパパとお話ししていたんだよ」
「パパは天国じゃないもん」
小雪は赤い頬を膨らませてそう言った。
「ママと一緒だよ」
「そうか。ママと一緒か。小雪ちゃんは寂しいよね」
「ううん、ばあちゃんがいるからいいの」
「そうだね。ばあちゃんいるからね」
賢人は小雪を抱きあげると、居間のテーブルに腰を下ろした。
「まあまあ、賢人くん。毎年ありがとう。孝之も喜んでいることでしょう」
「いや、ぼくもなかなかここへ来れないんで。本当はもっと頻繁に小雪ちゃんに会いにくればいいのだろうけど」
「カネゴン、もっとウチに来て」
小雪はぴったりと賢人に寄り添っている。
「小雪ちゃん、金子さんはお仕事があるから仕方ないのよ。さあ、何もないけど、食べて。今日はおでんも作ったの」
「すみません。どうしてもここへくるのが夕方のご飯時になっちゃって。」
賢人は差し出された熱いおしぼりで手を拭くと、箸をとった。
「やあ、ちくわぶだ。うれしいな。おばさんの作るおでんは味がしみていて最高ですよ」
賢人はおでんを口に入れた。
テーブルには漬物や巻きずし、天ぷらも並んでいた。ご馳走だった。孝之の母は何時間もかけ食卓に彩りを添えたのだろう。
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