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慌てて煌河さんの口を塞ぐ。ただでさえ通る声をしているのに、人がたくさんいるスタジオ内でそんなこと言われたらどんな噂が飛び交うかわからない。
でも、煌河さんはにこにこと笑ったままで一切悪びれていない様子だった。
「……煌河さん~……」
「はは、ごめんって。大丈夫だよ、みんな俺たちの会話聞いてるわけないから」
「でも絶対耳に入ってきますよね?」
「……大丈夫だよ」
「えっ、なんですか、今の微妙な間」
僕が目を細めて煌河さんのことを見ると、心なしか煌河さんが焦っているように見える。更に顔をずいっと近づけると、小さく「……ごめん」と漏らした。
いつも堂々としているのに、そういう姿は新鮮でつい笑ってしまう。
笑っている僕を変なものでも見るような目で見ている煌河さんの顔がなんだか面白くて、お腹を抱えて笑っていると監督から声をかけられた。
「じゃあ、始めるよ!」
その声に、僕と煌河さんで顔を見合わせる。
今日も頑張って声を出そう。
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