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(ん?これは…カラス、だ。あれ?このカラス様子がおかしい!)
そのカラスはひどく傷ついて倒れていた。羽はところどころ欠けていてボロボロで、ぐったりと目を閉じ、辺りはそのカラスから出たと思われる血で赤黒く汚れていた。
「うわ…これはひどいな」
思わず俺は呟きながらそのカラスをよく見る。背中から翼にかけてざっくりと誰かに斬りつけられたようなひどい傷があった。一体誰が…思わず手を伸ばしかけるとカラスはぱちりと目を開け素早く首を伸ばし俺の手を突いた。
「いったぁ…」
血が出るほどではなかったが、結構痛かったしせっかく手を差し伸べてやったのに、という怒りの念さえわいた。
俺とカラスはにらみ合った。しかしカラスはもう飛ぶ程の体力も残ってないようで、身体を地面に横たえていた。睨んでいた目つきもだんだん弱々しくなっていく。もう死んでしまうのも時間の問題だろう。その姿を見るうちにだんだんそのカラスがかわいそうになってしまった。でもどうすることもできない。嫌なもん見ちゃったなぁ。
「ごめんな、俺じゃお前を助けられないや」
そう呟き、早く立ち去れとでも言いたげなカラスをしばらく見つめそこから離れようとする。その時だった。後ろから低い唸り声が聞こえたのは。
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