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地獄への穴
俺は走って真一たちのもとへ行く。今思えば速く走る意味はなっかたと思われる。が、その時俺は知らなかった。
心臓の鼓動がどんどん早くなり痛くなっていく。だが無理やり足を運ばせる。
心臓も足も脇腹も痛い。息が荒くなり、猛烈に止まりたい衝動に駆られる。だがこのことを早く真一たちに伝えないと。という思いが胸の中で踊りくねっていた。
「はぁ、真一、綾乃。話がある。聞いてくれ。」
息を整えながら言う。
「ん?なんだ?神」
「なーに?神、話って」
「実はな……」
俺は考えていることすべてを話した。突拍子もない話だがちゃんと聞いてくれ
た。
「ヴェルさんはそんなこと考えていたのか……」
「ちょ、待って。あくまで予想だから、鵜呑みにしないでくれ。」
「うん、わかった。」
俺はこの後、自分の部屋に戻り、装備も脱がずに寝てしまった。洗脳されていると考えているときにこんなことをして大丈夫なのか、という考えにとらわれたが、睡魔に勝てなかった。
翌朝、装備を付けて寝たせいで、体がばっきばきになった。せめて脱いでから寝ろよ、俺
「着替えるか……」
独り言をつぶやいた。俺は異世界の少しザラザラとした服に着替える。(このザラザラした奴はどうやら俺だけ。みんなは触り心地最高なサラサラした布である。どんだけ俺嫌われてんだよ)
俺が転移してきた時に来ていた学ランは、すでにボロボロだ。毎日毎日摸戯戦をしてたらまぁそうなるよな。
――コンコン
ドアがノックされた。
「ちょっと待ってくれ。」
俺は急いで寝癖を直し、歯を磨いた。あれ?歯を磨く必要あったか?まあ、いいや。
「入ってくれ。」
「失礼いたします。お飲み物をご用意いたしました。」
昨日、限界を超えてまで走ったからとてものどが渇いていた。
「ああ、ありがとうございます。」
透き通った透明な水が喉を通る。そして体全体に染み渡って行く。完全にのどの渇きが癒えた。
メイドが朝早くに部屋に来ることに一瞬疑問を覚えたが、すぐに消え去った。
コップをメイドに返そうとすると、コップを落とした。急に力が入らなくなったのだ。
次第に手足が痺れ、感覚がなくなっていく。次第に意識までもが遠のき始めた。
メイドがポケットから透明な液体を出し、少し飲んで残りを俺の部屋の机に入れた。
「貴方が悪いのですよ。あの方の企みを知ってしまった貴方が。彼らに伝えなかったら良かったのに。馬鹿な人族」
意識が途切れる寸前にその言葉が聞こえた。そしてメイドのドサッという倒れる音が聞こえ俺の意識は完全に無くなった。
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