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「ああ、そうだカンが良いな。」
「無理だって。こんな穴飛び込んだら死んじまうだろ。」
「五月蝿い。さっさと飛び込め。消え失せろ、罪人めが。」
まだ歳若い正義感に満ち溢れたような兵士がそう言い終わった瞬間、背中に強い衝撃が加わり、体に浮遊感がまとわりついた。
俺は、何が起きたのかをすぐに理解した。兵士に蹴られ落ちているのだ。
蹴られたことに気づいた瞬間、俺の中に再び憎悪と憤怒が浮かび上がった。
殺してやる、と思い上に手を伸ばす。だがもちろんそこに手でつかめるようなものはない。
俺は穴の底に落ちていった。だんだん光が遠くなり俺の意識すらも消え失せようとし、
過去の思い出が浮かび上がってくる。
(なんだこれ、走馬燈ってやつか?。そうか俺もうすぐ死ぬんだな。)
そう思ったとき、俺の中には既に憎悪があふれかえっていた。
呪ってやる。
呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる
呪ってやる....................................................................................
幾度となく呪を、つぶやいていく。
だがその間にも、意識は削られ続けていき――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――俺の意識はそこでなくなっていた。
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