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地獄に墜ちた
天には雷を鱈腹ため込んだ黒雲が犇めいていて、ここは昼でも夜と変わらず薄暗い。
たまに雲の薄い天気が良い日もあるが、それでも青空には程遠い。
雲の隙間から空が見られたとしてもそれは青空なんかではなく、血のように真っ赤な空だ。夕日とは違い、まるで地底のマグマのような紅さで、見つめているだけでも眼球が焼けただれてしまいそうな灼熱の紅空だ。
ここは広い。そもそも空間的概念が存在しないと言っても過言ではない。
だから、この場所の面積は“決して求められない”
そもそもここは地球上に存在しないはずの空間だ。上下左右、東西南北どこを向いても、地球上の常識が通じる箇所は一つもない。
それがこの地獄という世界。
生前に罪を犯した人間の魂がここへとたどり着き、その罪の重さに相応しい罰を受ける。
不思議なことに、現世では天国よりも地獄の方が認知度は高い。
天国はどんなところか、と聞かれれば、十人十色の天国が存在するだろうが、地獄がどんなところか、と聞かれればほとんどの人間は口を揃えて同じ場所のイメージをする。
鬼、針の山、血の池、閻魔様…
なぜ天国の認知度は低く、地獄の認知度が高いのか。
答えは簡単である。
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