地獄に墜ちた

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天国は一方通行の世界であり、入っていく者は居れど、戻るものなど存在しない。 一方で、地獄は転回する機関。生前に過ちを犯してしまった魂を罰し、更正させ、天国にいけるようにもう一度現世に生まれ変わらせることを目的とした機関である。 だからこそ、ごくまれに現世に記憶を持ち帰り輪廻転生する人間がいる。 それら体験談により、現世に数多く残されている記録が、先ほど述べたような、針山、血の池、云々である。 だからといって、それらは地獄の意図せぬ漏洩ではなく、抑止力のためあえて現世へと流されている情報である。 地獄の罪人達を見たかつての閻魔大王が閃いた犯罪撲滅キャンペーンの一つ。 「死んだら地獄に堕ちるかもしれない」という恐怖心から少しでも地獄へ訪れる者を減らそうと、三百年以上前から地獄が行ってきた。 だが、そのキャンペーンを始めてから三百年というもの、効果はお世辞にもあるとは言い難く、年々地獄(魂)人口は鰻登り。 地獄はどこへ行こうが罰の順番待ちは当たり前の超人気施設へとなってしまった。 このまま後三百年ほどで人口が増え続ければ、地獄は間違いなく破綻してしまう。 かの閻魔大王は、人で溢れかえり芋洗い状態になっている血の池地獄を眺めながら頭を抱えた。     
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