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「どんなに人が増えようと、一人一人の刑期を軽くするわけにもいかぬ。さてどうしたものか」と。
頭をひねった挙げ句、閻魔大王は閃いた。
「引退して、若い倅に後を任せよう!」
所謂、丸投げである。
閻魔大王は千年以上勤め上げた閻魔大王という役職を引退し、息子に閻魔大王の席を譲った。
息子は露骨に嫌悪と軽蔑の視線を父にこれでもかというほど突き刺していたが、結局のところ逆らえるはずもなかった。
「お前、前から継ぎたいって言ってたじゃん?」なんてかるーく閻魔の席を譲り受けた。
息子は一度も「継ぎたい」などと言ったことはない。
それがちょうど今から百年ほど前の出来事になる。
「閻魔様だ!」
「おい、閻魔様がおいでになったぞ!」
「あぁ、閻魔様!今日は僕からお願いします!」
「くぉおら!豚共!俺に並ぶな!罪状に見合ったエリアに並んでろ!」
色とりどりの作務衣を着せられた罪人達が、一人の青年を取り囲んで嬉々とした歓声を上げ、わらわらと波のようにうごめいた。
その人混みはあっという間に広がり、どこからともなく罪人達が集まってきてはその輪に加わり、我先にと中心へ近づこうとする。
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