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「謝ってる暇があるんなら、働け。」
未だに謝罪の言葉を重ね続ける獄卒達に北風のように厳しい声で告げると、青年は腰にぶら下がる刀の柄部分に腕を引っかけ、お供も連れずに一人でぷらぷらと地獄の血に染まって赤い土を踏み締め、その場から歩き去っていった。
「おっかねえ…」
青年の小さくなる背中を眺めながら、誰かがぽつりと呟いた。
「しっかし、ひでえ臭いだな」
「一週間は消えねえぞ」
「何なんだよ、あれ」
一人の獄卒は、目の前に広がる光景に思わず悲鳴に似た声をこぼした。
遙か遠くに、靄で霞んだ建造物がうっすら見えはするものの、その他には草木もない、木の一本すら見あたらない砂利が永遠と広がっている地獄の地。何百といた罪人達は、全員が重なり合うようにして地に倒れていて、誰一人として例外なく骨すら残さずどろどろに体を溶かされていて、辺り一面に真っ赤な湖ができあがっている。
その湖面には罪人達が着ていた罪状ごとに色分けされた作務衣がどれも真っ赤に血を吸ってずっしりと漂っている。
日々、何百年と罪人に非道な罰を与え続けている獄卒でさえ、その光景には息をのまない者はいない。
「どうして、あの方達は、あんな恐ろしい方に…」
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