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「言いたくないか。明日、学校でクラスのみんなにも聞いてみるから、少し時間をくれないかな」
「……」
「……ごめんな。ダメな教師で」
申し訳なさそうにそう締めくくり、両親に深くお辞儀すると、担任は家から出て行った。
ひじりは、これほどまでに目上の人に対して怒りを覚えたのは生まれて初めてだった。この教師では絶対にダメだと、思わざるを得なかった。
あの学校は、もう悪魔に占領された地獄でしかないのだ。あの担任も悪魔だ。悪魔の言葉は嘘ばかりだ。
「ひじり、何か言いたくなったら、いつでもいいなさい」
父親は勤めて優しい口調でそう言ってくれた。
その時は、ひじりは父親のことをとても頼もしく思った。そして同時に、とても苦しい罪の意識を感じても居た。
母親がぎゅっと抱きしめてくれたこともまた、ズキズキする胸の痛みを増幅させるみたいだった。
優しさが、苦しみを与えることを、ひじりは生まれて初めて感じていた。
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