第二話

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 虐めの現状を知っているのに、見て見ぬふりをする人もまた許せなかったからだ。  教師のことをしっかりと書いた。  担任のこと、無神経な音読をさせる国語の教師もしっかりと書いた。  怒りだけがその時はエネルギーになって、勝手にペンが動くみたいにスラスラと遺書が書きあがっていった。 「よし、できたぞぉっ」  まるで小学生の時、図工の授業で傑作ができた時みたいに無邪気な声が出てしまった。  何度も読み返して、悪人の醜さを事細かに記していることを確認する。  あとは死ぬ場所、死に方だった。  さっきも考えたが、学校で死ぬのは良い手とは思えなかった。  多くの人々が見ていて、自殺する瞬間を動画撮影するような状況が望ましい。  世の中は腐りきっていることを示すために、この自殺は執り行われるのだから。  そんな世の中で生きている者に愛想を尽かして私は死ぬのだと示すためなのだから。  穢れ切った社会人と、私は違う。  私はまだ汚れていない。  汚れないまま、美しく死にたい。  できるだけ無残に、グチャグチャになって死んでしまいたい。粉々になって跡形さえ残したくはない。 「電車に轢かれるのが一番良さそう」  朝のホーム。多くの人々。つまらなそうにしている眠たげな目を覚まさせるセンセーショナル。     
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