17人が本棚に入れています
本棚に追加
通勤ラッシュのその時刻、電車に撥ねられ死ぬのが一番素敵ではないかと考えた。
「痛いかなあ」
そんなことをぼんやりと考えた。
不思議なことだが、できるだけ痛い思いをしたいと思っているところもあった。
それが自分が受けるべき罰のような気もしていたからだろうか。
それとも、できるだけ苦しんで死んだ方が、呪いをこの世に残せるかもしれないと思ったためだろうか。それはもう分からない。
「朝八時過ぎの電車……。『月曜日は重たい日』――」
カレンダーに目を動かすと、次の月曜日は五月二十七日だった。
この日にしよう。そう決めた。
ロシアの人も、月曜日は憂鬱にしているくらいなのだ。
月曜日がいい。そうしたら、この自殺がロシアまで届くような気がした。
「みんな、そんなに月曜日が嫌なら死ねばいいんだ。私みたいに」
みんなが出来ないことを率先してやってあげようと思った。これから先、毎週月曜日に多くの人が自殺をするように願いを込めた。
ひじりは、無邪気な子供のころのように、煌めく瞳をしていた。
とても、自殺をしようと決意した少女の顔とは思えなかった。
やはり、フィクションとノンフィクションは違うなと、他人事のように思った。
最初のコメントを投稿しよう!