第三話

2/7
前へ
/71ページ
次へ
 誰も助けてくれなかったこと。  その後も反省している人が誰も居なかったこと――。  全てを伝えて、ひじりは言葉を待った。  ひじりが倒れた日、そんなことがあったことを知らなかった母は、涙を溢れさせて担任に激昂していた。  担任は、葬式に並ぶ参列者みたいに深刻な顔を作り上げて、「申し訳ありません」と謝るだけだった。 「クラスのみんなにはしっかりと注意をした。来週から、もう一度登校してみないか」  担任は、ひじりにそう告げた。母親は、ひじりの意見を尊重すると言い、ひじりの回答を待った。  ひじりは、その時、なんとなく考えていた。  ――注意をした?  それで解決になるのだろうか。月曜日に学校に行き、クラスメートがみんな自分に頭を下げて謝るのだろうか。  そんなことが起こるはずがないのは明白だ。  また、そんなことがあったとしてもその謝罪は心からのものではない。  注意されたから、『謝る行為』を見せつけるだけなのだ。  謝ったから、はい仲直り。そんなに簡単に話がまとまるわけがない。そういう社会をみんなで作ったのだ。学校はその色が克明に浮かび上がる場所だと思った。     
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加