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自殺をしようと常々考えていた。何かしらの一撃を与えないと、この社会は揺らがない。
例え、この自殺がその内忘れ去られてしまうようなことになろうとも、一撃を与えなければ、この社会はどこまでも無感情に自分の気持ちを無視していくだろう。
一瞬でも、自分に対して意識を向けさせたい。その方法が、ひじりにとって、自殺という方法に過ぎなかっただけだ。
「先生。私、月曜に学校へ行きます」
そう答えた時の担任の顔は、失笑ものだった。
担任は、野球中継を見ている観客が、ホームランに沸き立つみたいに表情を明るくさせて、「そうか! ありがとう!」と笑ったのだ。
(ありがとうじゃないでしょ)
その言葉で、よく分かった。
この男の本心が。
自分の保身のために、ひじりを学校に通わせようとしているだけなのだ。
仕事のために、業務をこなしているだけであって、傷ついた生徒を思いやる気持ちがないのだと、一瞬で察することができた。
そうして――、月曜日の朝、駅のホームでひじりは待っていた。電車が来るのを。
自分を轢き殺す電車がやってくるのを。
「まもなく、一番ホームに快速電車が通過します――」
この駅では止まらない快速電車の通過を報せる、駅員の声に、ひじりは前に歩み出した。
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