第四話

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 ひじりは『消滅自殺計画表』を開いた。  小さな手帳はメモ帖のようで、まず最初のページにこれも手書きのボールペンの字が書き込まれてある。 『自殺するにあたり、何よりも重視すること。――それは己の死を、他者に気が付かせないことである』  そのようなことが、最初のページに記載してあった。 「なにこれ」 「自殺の流儀だ」 「流儀?」 「そう、オレの流儀。オレの自殺の計画表」  飄々した声で、稲葉は言った。  ひじりは、表情を変えず、稲葉に訊ねた。 「自殺の計画を立てているんですか?」 「そう。自殺する予定だから」 「……」  ひじりは、変なヤツだと思った。しかし、自殺を考えるような人間はすべからく『変人』なのかもしれない。  自分だってさっきまで死ぬ予定で動いていた。『声』が『変』な自分は、周囲から『異常』だとレッテルを貼られている。  そして、そんな自分だからこそ、この稲葉のことを『変人』なんて呼べる資格はないと自然に思った。 「自殺をするのに……」 「ちょっと待った。あんまり自殺自殺言ってると、周りから注目を浴びる」 「はあ?」 「『自殺』のことは、『おでかけ』って言うようにしよう」 「……『おでかけ』するのに、こんな計画表を作ったんですか?」     
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