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第一話
『月曜日は重たい日』というロシアの諺があることを知った。
どこの国でも月曜日は憂鬱になるということだろうなと、小野寺ひじりは朝の光の中、うつろな目をして考えていた。
五月二十日、月曜日――。
春の風がぬくもりを届けて、スカートの裾を揺らした。
紺色の中学校の制服は、ひじりにとって囚人服のようなものだ。地味なセーラー服は可愛くないし、堅苦しい。
これを着込むと、自分の人格がカチカチに固められて、枠の中から飛び出ることを許してくれなくなる。
通学路を歩いていても、通り過ぎた見知らぬ人が一目見て、滝音中学の生徒だと分かるだろう。それが、ひじりは嫌でしょうがなかった。
右手に下げた鞄はとても軽い。
それもそのはずで、鞄の中身は紙切れが一枚だけしか入っていない。
遺書だ。
ひじりはこれから自殺をする。中学一年生、まだ十三歳の誕生日も来ていないけれど、ひじりは今日で人生をおしまいにしようと決めていた。
自分を殺すと書いて、自殺。
そうだとしたら、ひじりはとっくに自殺していた。
中学校に上がってから一か月ちょっと。そのほんの一か月で、ひじりは自分を殺して生活していくことになった。
原因は声だった。
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