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 金髪美形のウセスの方が、縋るような目つきで見つめてくる。あぁ、美形って得だ。それだけでなんだか心が揺れてしまう。対するヤティルと言ういかにも戦士と言う感じの方を見てみると、これはまた、不機嫌と言うかなんというか、なんとも微妙な顔をしていた。さっきから思ってたけど、不本意そうなのは仕様なんだろうか。  とにかくおしゃべりな三毛猫の言うとおり、どうやらあたしはこの現実を受け入れなくては一歩も前に進めないらしい。 「……わかった、なんとなくだけど。ともかくあたしはその、グァブってのをやっつけるために喚ばれたってわけね?」 「そうそう、ごくごく端的に言うとそーゆーこっちゃ。なんや、そうアホでもないやんか」 「失礼な猫だね、あんた」  ケラケラと可笑しそうに笑うトフに、今度はあたしがため息を吐く番だった。けど果たしてあたしに、そんな大それた力が本当にあるんだろうか。 「ともかく、そのグァブってやつをやっつければ帰れるわけね?」 「そーゆーことや」  帰る。そうだ、力があろうとなかろうと、あたしはこんな訳の分からない世界から家に帰らなきゃいけない……って、どこへ? 「……トフさん」 「なんどす?」 「問題です。あたしは、一体どこから来たのでしょう」 「は? 知りますかいな、そんなん。あてらは『伝説の乙女が光の祭壇に現れる』、いう伝承しか知りまへんわ」  今更だった。けど少し落ち着いて考えてみたら、あたしは全く何もかも、全然分からない、つまり記憶というものが、一切なかったのだ! 「そんな……お名前も思い出せないのですか?」  ウセスが、心配そうに顔を覗き込んでくる。 「待って待って、名前だけは分かる。ミ、サ、キ……うん、そう、『ミサキ』。それが名前なのは憶えてる」 「『ミサキ』さま……素敵な響きですね。聖なる乙女にふさわしい」  ウセスのような超絶美形にそう言われるとなんとも歯痒い感じだけれど、この人はこれが基本仕様なんだろうか。こんな調子の人達とこれからしばらく一緒に過ごさなきゃいけないのなら、ちょっと色んな意味で覚悟が必要かもしれない。じゃなくて! 「まぁ、記憶なん言うもんは追々思い出していくやろ。そんな心配せんでもええて」 「それも伝承?」 「いや、あてがなんとなく思いついただけ」 「思いついただけって、適当すぎやしませんか!?」  酷い、この猫本当に信用できるんだろうか。
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