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 箇条書きにしてあるそれぞれの項目を確認して打ち消し線を引いていくと、シャープペンがノートを滑る音が、静かな部屋の空気を少しずつ割いていくように広がった。  すでに整理のすんでいる殺風景な室内は、家具や余計なものがない分よく音を反響させて、ペン先の小さな摩擦音を、やたらと大きく耳へ伝える。今まで音を吸収していたであろうテーブル下のラグも今はなく、むき出しになった床はひんやりと直に触れる脚を冷やして、私の体温の存在を身体へと実感させていた。その感覚に、私は居心地のわるい気持ちになって、シャープペンを動かす手をわずかに速めた。全てのチェックが終わった部屋は突然に音を失って、まるで生き物なんてひとつもいないみたいな静寂に包まれた。  私は心のどこかでほっとしながら、手帳とともにテーブルに並べてあったピーナッツバターと地図を手前へ引き寄せると、墓地までの地図を手帳の一番後ろへ挟んで、ピーナッツバターと一緒に空の鞄へ放り込んだ。     
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