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 夜もずいぶんと深まった大都会でもない街は、人影もあまり見られなかった。  かれこれ一時間ほど歩いたけれど、すれ違ったのは野良猫と回送のタクシーくらいで、真っ暗な道の向こうには酔っぱらいすら見当たらない。  こんなふうに生気の感じられない場所を歩いていると、もしかしたら私もこの世界に溶け込めているんじゃないかなんて、無意味な錯覚をおこしそうになる。そんなに簡単でないことはこの二十二年間でよく知っているはずなのに、こういうところが、お母さんにも学校の偉い人にも選ばれなかった所以なのかもしれない。  しんと眠りこけた街は、鞄の中の瓶がぶつかる音と一緒に、存在のあいまいな私の足音すらもよく響かせる。  けれど一歩を踏むごと、静かな靴音が夜に響くごとに、私の心はこの感覚を手放すことへとまっすぐに向かっていた。  墓地は、まだ先だろうか。重くなっていく足に、住宅地から離れた高台の公営墓地を選んだ自分をほんの少し憎らしく思ってから、私はふるりと頭を振った。  死体なんて、見つけて気分のいいものじゃない。できるだけ、少ない人数の目にしか触れない場所でなくちゃいけないのだ。お寺の墓地は近い分、住宅街のすぐ外れにあったのだから、しょうがない。     
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