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トラックらしい轟音は近くで一度唸りを上げたあと、どんどんと小さく遠ざかっていった。
「いったぁ……」
冷たいアスファルトに寝転んだまま、頭やら腕やらあちこちの痛みに悶えて、私は小さい呻き声を上げた。
今、一体なにが起きたのだろう。轢かれた、と思ったのに、かすり傷だらけの身体は、痛みはあるものの致命傷なんてまずなさそうだった。
なにかがおかしい。
轢かれる前に立っていたはずの位置から二メートルほど離れた歩道に転がりながら、私は事故の瞬間を反芻した。あのときトラックは前からきていたはずなのに、左側から衝撃を受けたような……。
痛みと混乱で上手く回らない頭を必死に動かして、はっとした。
腕だ。さっきトラックが突っ込んできたとき、確かに私を左から押し出したのは、人間の細い腕だった。
もしかして、誰かを巻き込んでしまったんじゃないだろうか。考えるだけで血の気が引いて、痛みとは別のもので手足がガタガタと震えた。
自殺しようとしてのものではない。けれど、助かろうという気もなかった。
そんな私を助けるために誰かが代わりに轢かれたなんて、最もあってはならない事態だ。
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