さよなら粉雪

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 始発にはまだ早い駅のホームには私たちの姿しかなく、昨日の夜から突然降り始めた三月中頃という季節外れの雪は淡い新雪となって薄くホームに積もっている。空を見上げれば、低く立ちこめる曇り空からは、細かい粉雪がちらちらと風に泳ぐように舞っていた。  カバンをホームに置き、私に背を向けていたあなたは振り返り、私を目を細めて優しく見つめる。 「本当にこんな朝早くに来てくれるとは思わなかったよ、悪かったね」 「……いえ、私がしたいから来ただけです。」  優しいあなたの声にぶっきらぼうに答えることしかできない私。もっと言いたいこと話したいことがあるはずなのに、私の口は上手く開いてくれはしない。いつもの部活や生徒会の壇上発言なら台本があるからいくらでもしゃべれるのに、話したいことを昨日の夜考えていたが今日という日の台本はできやしなかった。
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