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~記憶の在処~
階段の踊り場、2階に場所を移す。
無論、独り言をぶつぶつ言ってる危ない人に見られないためだ。
小人は、7段くらい上ったところで立ち止まり―未夏に目線をあわせるためである―、言った。
「一応いうけど。ハクシキはキミにふさわしくなかった」
彼女はその物言いに少し引っかかり、首をかしげる。それに気づいたのか、小人がしれっと、
「あれ、いってなかった?この弓矢は、婚約者を選定するためのものだって。」
「聞いてないよ!」
「?じゃあなんだと思ってたのさ。」
「そりゃ…みんなの悩みをきいてできればこれを解決するってことだと、思ってたんだけど」
小人はくくっ、と愉快そうに笑う。
「そうか、そうかー。いやー面白いな、キミ」
むっとした未夏は話題を切り替えることにした。
「ねぇ、そんなことよりさ。婚約者って言ったよね?」
「?うん」
「それ、選ばなくていいから。」
「えー!」
「そんなの、自分で決めることだし。よけーなお世話よ。」
「でもさ、キミが未来で不幸にならないようにできるんだよ?」
少し、考えてしまった。たしかに魅力的ではあるかもしれないが…。
「…いや、いいよ」
しかしアリベルは、惑った未夏を見逃すはずもなく。
「あ、ちょっと迷ったよね?ねー?」
「くどい!」
もう、ここまできたら意地だと思う。
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