SIDE:イヌ

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 七日に一度、全てのイヌが集まる総会。その議場になるのは、絶対に安全な僕らの根城、地下室だ。僕らが到着してすぐ出欠が取られ、今日は二匹、姿を現さなかった。  ごほん、と、議場の真ん中で一匹の老いたイヌが咳払いをする。彼が僕らのリーダー、オリヴァーだ。年を取っても衰えぬ身体と冷静な判断力で、どのイヌからも絶大な信頼を寄せられている。 「.......では、まず今週のコオニたちによる死者、合わせて十一匹の名を読み上げる」  世間話なんかをしていたイヌたちの声が、ぴたりと止んだ。静寂の中、厳格な声で一匹一匹の名前が読み上げられる。その中には狩りの最中に戦死したイヌだけではなく、三日前に僕にご飯を分けてくれたおばあさんも、五年前に知り合って以来会えば話をする仲の子イヌも、含まれている。  全員の名を読み上げ終わると、しばらく祈りを捧げる。僕らの中に「カミサマ」ができたのはつい最近のことだが、これだけの数のイヌが祈り続ければ、亡くなったイヌたちも少しは救われるかもしれない。そんな思いで、僕らはカミサマを本気で信じている。 「.......今日の議題。『コオニに対する対処について』」  オリヴァーが厳格な面持ちで宣言する。コオニがこのセカイに現れてから、総会の議題はずっと変わらない。  彼が議題を言い終えてすぐ、ゴールドが待ちきれないといった様子で話し出した。 「今週も、俺らの同士が何匹も殺された。奴らは俺らをただ殺すんじゃない。丸焼きにして、喰うんだ。食料庫を三つも奪っておいて、奴らにはまだ食べ物が必要なんだと!.......オリヴァー、いい加減に腹を決めてくれ。あんたの命令があれば、俺は必ずコオニたちを根絶やしにする」  ゴールドは、かねてからコオニに対して強硬な態度を取るべきだと主張している。彼自身が狩りで多くのコオニを殺してきて、また同胞が殺されるところを見てきたからだろう。今も後ろで頷いているイヌたちのように、そんな彼に賛同する者も多い。
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