SIDE:イヌ

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「.......でも」 「あ?」 「でも、僕らはコオニのことを何も知らない。コオニたちがなぜ僕らを殺すのか、食べるのか。それが分かれば、僕らとコオニたちは共存できるんじゃないかな」  僕の後ろで、イヌたちがその通り、と叫ぶ。ちっ、とゴールドが舌打ちをした。  僕はコオニについて、ゴールドたちとは違う考えを持っている。それを総会の場で言ってみるうちに、いつしか大人のイヌたちからも賛同の声が上がるようになった。  ゴールドが最有力候補だった次代のリーダーの座についても、今は僕の名前が挙がることの方が多い。  僕は自分よりゴールドの方がずっとリーダーにふさわしいと思っているのに、周りはそうは思ってくれない。それでゴールドが怒り出して、僕に食べ物をくれなくなるのではないかと怯えていたのだが、彼にそんな気はさらさらないようだ。  僕と彼が争うのは、あくまで総会の場だけ。それが僕らのルールだった。 「また『共存』かよ、エドガー。そんで、その理由とやらはいつ分かるんだ?そうこうしている間に、俺たちは全滅しちまうぞ?」 「.......だからそれは、コオニたちを観察して、理解し合うしかないよ。お互いが攻撃できないような場所を作ってさ」  そう言いながらも、僕は痛いところを突かれた気分でいた。何しろ、僕らはコオニの言葉が分からない。話ができない相手のことをどうやって理解するのか、僕はそのアイデアを持ち合わせていなかった。 「そもそもだ。お前はいつも平和的に、と言うが、平和的に解決する必要がどこにある?ここはもともと俺らの場所だ、勝手に入ってきた侵入者は皆殺し。それで良いじゃねぇか」 「そんな.......!コオニたちだって生きてるんだよ!」 「それがどうしたっていうんだよ、面倒臭ぇ!」  議論のヒートアップとともに、それをお互いの後ろで聴いていたイヌたちの小競り合いが始まる。興奮して相手陣営のイヌにちょっと噛み付いたり、前足で蹴飛ばしてみたり。  それがだんだん喧嘩じみてきて、僕たちも議論どころではなくなってきたところで、オリヴァーがお決まりの台詞を言う。 「今日はここまで。議題は来週に持ち越し!」
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