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どのくらい経っただろう。
深い眠りから覚めると見たことがある風景。
垣根で囲まれた庭に柿の木が立っている。
何やら小動物が柿の木の陰から垣根の隙間を抜けていった。
どうやらシマリスのようだ。
民家にリスなんて珍しい。
それもそのはず。
庭の外は農道を挟み田んぼが広がる。
他の民家の回りは樫や銀杏の木で囲まれている。
車さえ通らない田舎。
少し離れた林からでも来たのだろう。
「よおっ! 帰ってきたのか」
「あ」
振り向くと同級生だったカズ君。
彼を見て何時の時代か記憶が甦った。
今、ここにいる俺は大人になりかけた若い頃。
何故今ここにと思い出そうとするとカズ君が話しかけた。
「お前、家を継いで農業やるんだろ? 俺は整備士になるよ」
そういえばカズ君は車が好きだった。
「これからはお互いに社会人だ頑張ろうぜ」
子どもの頃のガキ大将ぶりの口は変わってない。
カズ君は原付に乗って帰った。
しかし、ここにいる自分が思い出せない。
確かに農家の跡取りではあるが俺はもっと歳を取っていたはず。
まさかタイムスリップ?
いや、そんな非現実なことが起こるなんてあり得ない。
ここにいる俺の身体は軽い。ここにいる俺の身体は軽い。
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