目覚め

2/3
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
どのくらい経っただろう。 深い眠りから覚めると見たことがある風景。 垣根で囲まれた庭に柿の木が立っている。 何やら小動物が柿の木の陰から垣根の隙間を抜けていった。 どうやらシマリスのようだ。 民家にリスなんて珍しい。 それもそのはず。 庭の外は農道を挟み田んぼが広がる。 他の民家の回りは樫や銀杏の木で囲まれている。 車さえ通らない田舎。 少し離れた林からでも来たのだろう。 「よおっ! 帰ってきたのか」 「あ」 振り向くと同級生だったカズ君。 彼を見て何時の時代か記憶が甦った。 今、ここにいる俺は大人になりかけた若い頃。 何故今ここにと思い出そうとするとカズ君が話しかけた。 「お前、家を継いで農業やるんだろ? 俺は整備士になるよ」 そういえばカズ君は車が好きだった。 「これからはお互いに社会人だ頑張ろうぜ」 子どもの頃のガキ大将ぶりの口は変わってない。 カズ君は原付に乗って帰った。 しかし、ここにいる自分が思い出せない。 確かに農家の跡取りではあるが俺はもっと歳を取っていたはず。 まさかタイムスリップ? いや、そんな非現実なことが起こるなんてあり得ない。 ここにいる俺の身体は軽い。ここにいる俺の身体は軽い。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!