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驚いたことに、僕が彼の控えであることを許しがたい不満に感じていると直人は疑っているらしい。
「ベンチスタートが不満で辞めるわけないだろ」
「そうだろ? だから理由がわからない。夏まで頑張ればいいじゃないか」
「まあね、でもうんざりなんだ。逆に訊くけど、直人は今日の試合をどう思った?」
「俺か? はっきり言って、いつも通りの堅実な試合だったと思う」
「いつも通りの、堅実に見えるが効率的でなく、ただじりじりと負けていくのを受け入れるだけの試合、だろ?」
「そんなことはないだろう。負けたのは残念だけど」
僕は直人に腹が立った。
「僕にはそうとしか思えないんだ。直人たちと引退の感動を共有するためにその非効率性とアホらしさに目を瞑って夏まで付き合うのも悪い選択肢ではないかもしれないけど、6点差の場面でトランジションスリーを沈めた僕を直後に交代させた瞬間、僕は心底失望した。あんな自分のこだわりのためにチームを勝利から遠ざけるような監督の下で、大会に向けて一致団結できる筈がないと思ったんだ。もしチームが一枚岩になれるとしたら、それは僕がそこにいない場合だけだ」
「監督には監督の考えがあるんだろ。選手はそれに従うべきだ」
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