退部

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「賭けてもいいけど、ないね。あるのはこだわりだけだ。昔ながらの、苔のむしたような常識で、トランジションではレイアップかゴール下の合わせ、ポイントガードは積極的にシュートを打ってはならない、主軸となるのはセンターのポストプレイだ。それら自体が間違っているわけではないけど、今の僕たちの特性にはまったくフィットしない考え方だ。思考が停止してるんだよ。それを考えがあると表現するのは許せない」  言いたいことを言った僕はジュースを飲み、ポテトを食べた。直人はしばらく黙って窓を見ていた。何度か言葉を探すように机を指で叩いたり唇を噛んだりしていたけれど、結局僕を説得させられそうなものは見つかりそうもないようだった。 「ほかに質問は?」  僕は直人にそう言った。直人は大きくひとつ息を吐いた。 「バスケ、辞めるのか?」 「バスケは辞めない。好きだからね。どこかでどうにかしてプレイするさ」 「部活以外にそんな場所があるのか?」 「なんならこの1年は受験勉強に費やしてもいい。大学に入ったらいくらでもあるんじゃないかな。でも、想像だけど、探せばどうにかなるところはあるんじゃないかと思ってる」 「ポジティブシンキングだな」 「僕はポジティブ人間なんだ。でないと簡単に部活を辞めたりできない」 「そうかもしれない」と直人は言った。  話はそこで区切りがついた。「そういえば」と直人は話題を変え、僕らはしばらく友人同士として高校卒業後の進路について談話した。僕たちの通う高校は一応進学校に数えられるため、高校卒業後は大学へ進学するというのが一般的だ。     
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