トランジションスリー

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 敵は素直に壁を使ってきた。ボールハンドラーがスクリーンの方に進む。このまま平行移動するのは邪魔されているため、付いていくには僕はスクリーンの手前か奥のいずれかを選択して進路を調節しなければならない。  僕はスクリーンの奥を選択した。ファイトオーバーと呼ばれる手法だ。ハンドラーは慣れた動きでスクリーナーのギリギリ近くに進路を取った。僕は少しでもプレッシャーが弱くならないようについていく。  スクリーナーのマークマンだった仲間がヘルプディフェンスをしてくれる筈だ。あとはスクリーナーがどう動くかだ。彼がサイズの大きなビッグマンであることはわかっていて、スイッチして僕がマークにつくなら誰もが認めるミスマッチとなる。  そのまま自分もゴールに向かうのがロール、ゴールから離れるように動いてフリーになるならシュートを狙おうとするのがポップだ。これまでの試合中に彼はどちらの動きも見せている。  スクリーナーはポップした。スリーポイントラインの内側、遠めのミドルレンジまで広がっている。スクリーナーのマークマンだった仲間がきちんとハンドラーをケアしているのが間接視野で把握できた。  ここで僕の取り得る選択肢はふたつある。すなわち、ダブルチームの形でハンドラーのドライブのマークに自分も加わるか、ポップしたビッグマンのマークをするため一緒に外に広がるかだ。     
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