トランジションスリー

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 それが彼を思い切らせたのだろう。彼はボールをついて背中ごと僕に向かって一歩進んだ。僕はできるだけ重心を落とし、足を踏ん張り胸でそれを受け止める。  ターンしてドライブしてくるか? しかなかった。彼はステップバックするようにして僕に正対し、フェイダウェイ気味にジャンプシュートを試みた。  それは僕の想定内のプレイだった。体格差はあるが僕は彼のステップバックについていき、ルールの許す限りの妨害を試みた。  成功だ。彼のシュートはリムに嫌われ、リバウンドを仲間が取った。僕は既にパスを受けられる位置に移動している。僕の右手にボールが渡った。  反撃だ。高さはあちらが優位だが、速さはこちらに優位がある。今シュートをミスした長身の選手に僕を追うことは不可能だ。  僕は前方に強くボールをつき、ほぼ全速でフロアの状態を確認する。逆サイドから仲間が走っている。僕は右のレーンだ。中央には誰もおらず、2対1の状況になっていた。  距離的な少しの余裕が僕にはあった。センターラインを越すときわずかにスピードを緩めた僕は、自分のテンポでスリーポイントラインへボールを運んだ。逆サイドの仲間は中央に向かって切れ込んでおり、彼のケアをしなければならない唯一の敵は僕のところまで出てこられない。     
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